ヨーロッパ南東にあるブルガリアに「バラの谷」という一帯があります。
このバルカン山脈の脇にある東西140キロの細長い谷には、バラが沢山咲き、あたり一帯がピンクになります。
今回は、この「バラの谷」をご紹介します。
ローズオイル(バラ油)の世界的な産地
かつて共産主義時代は、銃や拳銃の生産しかしていないような地域でしたが、現在はバラを使ったローズオイルの世界的な産地となっています。
このローズオイルは、「金の液体」とも呼ばれ、わずか450gのローズオイルを作るのに1440キロ以上ものバラを必要とします。
この「金の液体」であるローズオイルは、今やブルガリアの名産となりました。
そして、ローズオイルの元になるこの地域で多く栽培されているのが、ピンクの花を咲かせるダマスクローズ(Rosa damascena Mill)になります。
原産地については、詳しくは分かっていませんが、シリアの首都ダマスカスから持ち込まれたという説や、古代ペルシャ原産とする説もあります。
ブルガリアの中央にあるカザンラクの「バラ祭り」
バラの谷の中心となっている町が、ブルガリアの中央にあるカザンラクという町になります。
毎年6月最初の週末に「バラ祭り」がカザンラクで開かれます。
お祭りでは、伝統的なバラ摘みや、バラの蒸留工程を見せたり、民族舞踊などで楽しませてくれます。
また、お祭りでは、バラ入りのケーキや石鹸、アクセサリー、ワインなども楽しむことができます。
お祭りの中では、その年、高校を卒業する人の中からバラの女王が選ばれます。
バラの女王に選ばれた女子高校生は、戴冠式に出ることになり、それから1年バラの女王としての活躍が期待されます。
そのバラの祭りは、毎年賑やかに多くの人が集まってきます。
そして、カラフルな伝統衣装を身にまとった女性が、楽しそうに踊っています。
祭り最終日は、バラの女王を先頭にパレードが行われます。
ブルガリア大統領も見守る中、多くのブルガリア市民が続いていきます。
パレードでは、戴冠式を終えたバラの女王の他、歴史上の一場面を再現したり、架空の世界を再現したりしています。
バラの女王は、皆の羨望の眼差しを受けることになります。
パレードは市民総出で出ますが、最近では海外からの観光客も多く訪れています。
パレードが終わると、広場でみんなでフォークダンスを踊ります。
とにかく踊ることが大好きな人達です。
バラの生産者の苦労
ローズオイルは多くのブランドメーカーから高値で取引されているにもかかわらず、バラの価格が低価格になっているという問題があります。
バラの生産者が抗議をすることなどもありましたが、その現状は解決されていません。
バラの生産者の主張によれば、蒸留所同士が互いに話し合いをして、安くバラを買い取るようになっているのです。
多くの地元住民は、政府が管理をして、バラの最低価格を決めていく必要があると考えています。
ローズオイル蒸留の工程が学べる「バラ博物館」
バルカン山脈のシプカ峠の途中にある「バラ博物館」では、ローズオイルの製造過程が見られたり、蒸留釜などが展示されています。
受付ではローズオイルや酒、クリームなどが販売されています。
また、バラ祭りの時期には、お祭りのプログラム付きのパンフレットが販売されています。
庭には何種類ものバラが咲き誇っており、様々な種類を楽しむことができます。
まとめ
いかがでしたか。
ブルガリアにある「バラの谷」は、バラがたくさん咲き誇る素敵な場所です。
地元の人たちの誇りであるバラに関するお祭りは、毎年盛大に行われています。
そして、ローズオイルという貴重なものを生産し続けて、ブルガリアの名産品にまでなっています。
これらは「バラの谷」に生活する人の、バラに対する思いというものが伝わってくるように感じられます。
そして、お祭りで見せる踊り好きな性格も、バラの谷の人の特徴でしょう。