学生時代から愛読し、今も折々に読み返す平岩作品……
その魅力を、少しでもお伝え出来れば嬉しいです。
今回は、平岩弓枝さんの小説とその魅力について、ご紹介させて頂きます。
平岩弓枝(ひらいわ ゆみえ)さんとは?
小説に詳しくない方でも、名前を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
平岩弓枝さんとは、テレビ創成期にドラマの脚本を数多く手がけ、また現代モノから歴史もの、エッセイまで、幅広い分野で作品を残している小説家さんです。
代表作は?
直木賞を受賞した「鏨師」や、夫を亡くした女性の第二の人生を描いた「女たちの家」、そして大河シリーズの歴史モノ「御宿かわせみ」など、有名作品がたくさんあります。
「肝っ玉かあさん」など、テレビドラマから生まれた物も多いのだとか……
何十年も前に書かれた作品でも、現代に通じる違和感の無いものが多いです。
人間のやることは、今も昔も変わらないのだなあ、と……
若干の言葉使いや、携帯電話が出てこないこと位でしょうか、違和感は……(笑)
特にオススメの作品は?
多作な方ですが、まず挙げたいのが現代フランスを舞台にした短編集「花ホテル」です。
フランスにある小さなリゾートホテルと、その従業員や泊り客が織りなす事件、人間模様を描いています。
一話完結ですが、シリーズを通して見ると一つの長編になっており、連作短編集でもあります。
主人公は、敏腕ホテルマネージャーの佐々木三樹。
そして、彼が仕えるオーナーが、美しい未亡人の朝比奈杏子です。
心のこもったおもてなしで、お客に喜んで貰おうと奮闘する佐々木達。
小さいけれど花がいっぱいのホテルは評判になり、やがて様々なお客が宿泊します。
因縁の相手と再会してしまった、老夫婦。
佐々木に想いを寄せる上司の娘・鮎子。
日本からやって来た杏子の姉に、杏子の亡き夫の家族など……
泊り客の起こす問題を片付けながら、少しずつ佐々木と杏子の距離は縮まっていきます。
しかし、共に結婚に失敗した過去を持つ者同士。
なかなか気持ちを口に出すことが出来ず、読者はヤキモキさせられます。
個人的に、短編の中では「男客」が印象に残りました。
日本からやって来た、対照的な二人の男性客。
一人は小太りで、威張り屋で横柄な男。
もう一方は、スマートで、紳士的な男。
対照的な二人の言動と、やがてラストで分かる、驚きの結末が爽快でした。
紳士的な男性が思わず見せた、茶目っ気のある行動に拍手です。
それにしても、こういう嫌われるクレーマーにはなりたくないな……
と、背筋を伸ばすお話でもあります。
時代劇なら「御宿かわせみ」
そして、もう一作。作者の代表作の一つであり、傑作時代小説でもある「御宿かわせみ」もオススメです。
何十年も続くシリーズですが、基本的に一話完結なので、どの巻からでも読むことができます。
時は幕末。
武家の次男坊・東吾と、宿を経営する恋人のるい。二人の人目を忍ぶ恋が縦糸で、様々な事件が横糸です。
宿の泊り客が持ち込むトラブルや、行く先で遭遇する殺人事件の数々。
剣の達人でキレ者の東吾と、亡き鬼同心の娘である、るい。
そして東吾の親友、同心の畝源三郎が、様々な事件に立ち向かいます。
しかし、殺人事件が出てこない話も多く、家族のすれ違いや憎しみ合いなど、ホロリとするお話も……
現代にも通じる恋の鞘当てや、児童虐待など、時代劇だからこそ生々しくならず、入り込める気がします。
個人的に好きなお話の一つが「岸和田の姫」
ひょんなことから東吾が保護した迷子の娘は、家出した旗本のお姫様でした。
病弱で屋敷の外を知らない彼女に、江戸の町を見せてあげたい……
姫の爺やに懇願された東吾は、兄たちの助けを借りて奮闘します。
町娘の格好でこっそり江戸見物を楽しむ姫の姿は、健気で愛らしく、そして切ないです。
彼女はこれから国許へ帰り、嫁入りすることが決まっていたのです……。
「お江戸版ローマの休日」ともいうべき本作。
可愛くも切ない、とても良いお話です。
ぜひ手に取って、読んでみて下さい。
まとめ
いかがでしたか。
まだ読んだことの無い方には、著書を手に取るキッカケになれば……
そして、ファンの方には、
「そうそう、これが魅力なんだよねー!」
と、共感して頂けたら嬉しいです。