神戸市営地下鉄を擁する神戸市交通局は、2017年(平成29年)8月1日に、神戸市電の開業より数えて100周年を迎えました。
そのように、長い歴史のある神戸市交通局ですが、当初の利用予測を大幅に下回る海岸線の運行赤字に苦しんでいるようです。
今回は、神戸市営地下鉄の概要と、各駅の一日平均乗車人数を調べてみました。
「西神・山手線」「海岸線」の2路線
神戸市営地下鉄は、神戸市交通局が運営している地下鉄です。
西神延伸線・西神線・山手線・海岸線の4路線を有していますが、西神延伸線・西神線・山手線は「西神・山手線」として、一体的に運行されていて、実質的には「西神・山手線」「海岸線」の2路線です。
出典:神戸市交通局
西神・山手線
出典:レイルラボ
西神・山手線は、当時開発中であった須磨ニュータウンと、神戸の市街地を結ぶ大動脈として建設されました。
愛称は、みどりのUラインで、ラインカラーもグリーンです。
まず、1977年(昭和52年)に名谷駅ー新長田駅間が開通しました。
その後、1983年(昭和58年)東方面へ延伸するかたちで、新長田駅ー大倉山駅間が開通しました。
そして、1985年(昭和60年)西方面へは西神ニュータウンを貫くかたちで、名谷駅ー学園都市駅間が開通、東方面へは大倉山駅ー新神戸駅間が開通しました。
さらには、1987年(昭和62年)西方面へ延伸するかたちで、学園都市駅ー西神中央駅間が開通し、西神・山手線の全線開通となりました。
現在、新たに新興住宅地として開拓された名谷駅以西からの通勤、通学の足として、多くの人が利用するようになっています。
ちなみに、西神・山手線は、三宮駅から新長田駅、及び板宿駅までは、JR線や山陽電鉄、神戸高速鉄道などと並行していますが、板宿駅から西は競合する鉄道会社はなく、板宿駅以西に住む沿線住民の方は、この神戸市営地下鉄しか通勤、通学の足がありません。
従って、それらの沿線に住む人にとっては、なくてはならない鉄道路線になっています。
海岸線
出典:神戸市交通局
海岸線は、南部の再開発地域を結ぶ目的で建設された、日本で3番目の鉄輪式リニアモーターミニ地下鉄で、2001年(平成13年)に開通しました。
愛称は夢かもめで、ラインカラーはブルーです。
三宮・花時計前駅は、下車して西神山手線の三宮駅まで、徒歩で7~8分程度で行き来することが出来ます。
乗客数
出典:神戸新聞
西神・山手線と海岸線では、利用人数に大きな隔たりがあり、圧倒的に西神・山手線の利用者が多いです。
その理由は、西神・山手線の西神中央駅、名谷駅、学園都市駅あたりには、多くの住宅があり、通勤需要が多いためです。
反面、海岸線は、御崎公園、和田岬エリア、そしてハーバーランド(浜手の商業施設に直接用事があるとき)に目的がある場合の利用が主になっていることが、利用者が少ない一因になっています。
西神・山手線の1日平均乗車人員は、順調に推移していて、毎年25万人台を維持して、毎年50億を超える黒字経営です。
対して海岸線は、開業当初想定の13・8万人に遠く及ばない、4万人台で推移していて、毎年50億近い赤字を計上しています。
神戸市営地下鉄の駅別一日平均乗車人員(平成28年度)を、円で表現してみました。
情報元は、神戸市交通局「地下鉄 駅別乗車人員(1日平均)」の平成28年度となっています。
この図で見ることでも明らかですが、西神・山手線と海岸線の乗客数の格差が、かなり大きいものとなっています。
他社線に接続する駅も多い
神戸市営地下鉄は、いくつかの駅でJR線や新幹線、私鉄各社と接続しています。
もっとも接続路線の多いのは三宮駅で、ここではJR神戸線、阪急神戸線、阪神本線、ポートライナーと接続していますし、駅名は違いますが地下鉄海岸線の三宮・花時計前駅とも同じ場所となっています。
また、三宮駅から北側に1つ進んだ駅が新神戸駅で、ここでは山陽新幹線と接続しています。
新幹線の新神戸駅というのは、JR在来線とは接続していません。
出典:苺の一枝
従って、会社の違う神戸市営地下鉄が接続してくれていることは、市民にとって大変ありがたい状況になっています。
神戸市営地下鉄が開通する前は、新幹線の新神戸駅へ行く公共交通手段は、バスしかありませんでした。
その時代に比べれば、非常に便利な時代になったということが出来るでしょう。
また、その他では新長田駅とハーバーランド駅でJR神戸線と、長田駅で神戸高速鉄道と、板宿駅で山陽電鉄と接続するなど、非常に利便性もよくなっています。
将来的に阪急電鉄と相互乗り入れ構想が
2017年の秋に神戸市長に再選した久元市長が、将来的に神戸市営地下鉄の西神山手線と阪急電鉄神戸線が相互乗り入れする可能性を示唆しています。
出典:KOBE journal
神戸市営地下鉄の阪急の乗り入れ案は、以前から噂はあったものの、神戸市が阪神大震災の復興による資金の不足などを理由に、棚上げになっていた経緯もあったようで、震災の復興費の支払いのめどがたった2017年になって、再度相互乗り入れの案が浮上したというのが、真相のようです。
阪急電鉄は、京都線が大阪メトロの堺筋線に乗り入れていますし、京都では近鉄京都線と京都市営地下鉄烏丸線が相互乗り入れを行っています。
出典:朝日新聞
震災の復興によって大阪、京都から都市開発にやや遅れをとった感のある神戸にとって、私鉄である阪急との乗り入れは、非常に魅力のあるプロジェクトであると言えるでしょう。
具体的に、どの駅で阪急と接続させるかなどは、これからの検討となるようですが、実現に向けてスタートを切ったのは間違いありません。
これにより、西神中央駅から一度も乗り換えなしで、阪急の大阪梅田駅まで一直線、ということになれば、地域の活性化という点から考えても、非常に意義のあることだと言えます。