日本の夏のアイコン的な存在として、また日本を代表する昆虫として、子供を中心に非常に高い人気を誇る国産カブトムシ。
一度は子供にねだられて、近隣の山野へ採集に出掛けた経験のある人も多い事でしょう。
しかし、思う様に採集出来ずに子供と共に大きな不満を残したまま、夏を終えてしまったという人も中にはいるはず。
今年こそは立派なカブトムシをゲットするため、寒い今のうちからでも出来る予習と共に、採集のコツを学んでおくのも良いのではないでしょうか。
カブトムシが多くいる森林ってあるの?
これまでも幾度となく近くの森林に出掛けたものの、上手くカブトムシに出会えなかったという人もいる事でしょう。
得てしてそれらの人がやってしまいがちなミスが、カブトムシの好む樹木の種類や森林のタイプを理解しておらず、殆ど生息していない場所を探し回った挙句、途方に暮れてしまうというパターンです。
森林であれば何でも良いと勘違いされがちですが、実際カブトムシが好み生息する森林はかなり限定されています。
具体的に言えば、クヌギやコナラを始め、夏場に盛んに樹液を出すブナ科の落葉性広葉樹が一定の割合を占める、雑木林を探すのがベストなのです。
もちろん、同じ森林でも、スギやヒノキといった針葉樹の植林地帯で探すのは、無駄の一言ですし、同じブナ科でも、殆ど樹液を出さないスダジイがメインの常緑樹林では、かなり難しくなる傾向にあります。
例えば、関東南部の丘陵地帯であれば、落葉樹のコナラと常緑樹のスダジイやマテバシイが混生している混合樹林が多く、これに少数のクヌギが絡む程度なのですが、この割合でも夏場ならカブトムシを採集出来る可能性は十分にあります。
カブトムシが好きな樹木の簡単な見分け方って?
カブトムシが特に好むのが、夏場に盛んに樹液を出すコナラやクヌギである事は、既に書きましたが、これを下草や樹木の葉が生い茂る夏場に見分けながら採集に臨むというのは、普段から樹木に興味が湧かない人には、かなり難しいと言わざるを得ません。
だからこそ、下草や落葉樹の葉も全て落ち、安全かつ比較的動き回りやすい冬場に、森林を歩きコナラやクヌギを探し、見当を付けておいた方が楽なのです。
一見、樹木の種類を判断するには頭上を常に見上げる必要があると思われがちですが、実際のところ、大きなヒントは目線より下、特に地面にあります。
コナラやクヌギはブナ科であり、ドングリを実らせる典型的な樹木でもあります。
つまり、森林を歩き回りながら足元を注意して見て、そこに大量のドングリが落ちていれば、ごく近くにコナラやクヌギが生えている可能性が極めて高いのです。
コナラのドングリは小柄な紡錘形ですが、クヌギのドングリはより丸くて大きく、ヘッドの部分に当たる殻斗が、まるでアフロヘアーの様に、もさもさした刺で覆われているのが特徴です。
慣れてくれば、落ち葉の形からも簡単に見分けられる様になりますが、まずは大前提として、ドングリの有無とその形状を覚えておくと良いでしょう。
また、コナラやクヌギは樹皮にも特徴があります。
簡単に言えば、マテバシイやヤマザクラの様にスベスベとしておらず、遠くから見ても簡単に認識出来る様な、裂け目の多いゴツゴツとした形状となっています。
それらの中でもより裂け目が細かく鱗状になっているのがクヌギ、縦方向の裂け目のみが目立つのがコナラ、と覚えておくと良いでしょう。
コナラやクヌギは落葉性なので、冬場は全て葉を落とし裸の状態になります。
それだけでも、年間を通して緑の葉で覆われたスダジイやマテバシイとの区別は、簡単に付くでしょう。
樹液の出た痕跡を見てカブトムシの気持ちになろう!!
コナラやクヌギの中でも、カブトムシが好む樹液を出す木には特徴があります。
それはずばり、かつて盛んに樹液を出していた樹皮上の痕跡です。
コナラやクヌギでも、樹液を良く出すのは、ひと抱え以上の幹を持つ高樹齢の大木であるケースが多く、樹皮が綺麗でフレッシュな若い木になるにつれ、その可能性は低くなります。
最近は人口の緑地公園にも、ビオトープ作りの目的でコナラやクヌギを植えるケースが目立ってきましたが、直径30センチ以内の若い木であるケースが多く、まだまだカブトムシを呼ぶには力不足という感じです。
クヌギの場合、同じ木でも毎年樹液を出す部位が決まっています。
大抵その部分は大きく樹皮が剥がれ、剥がれた縁の部分が不規則に盛りあがり、剥き出しになった材の部分には、虫が開けた小さな穴が多数見られるのが普通です。
こうした状況は、ボクトウガと呼ばれる蛾の幼虫の食害が原因とされていますが、いずれにせよ、この様な部位を持つ木を早目に発見しておけば後は楽。
樹液の出る夏場の夜から早朝にかけてこれらのポイントを巡回すれば、樹液に群がるカブトムシを発見出来るチャンスが高いのです。
一方、コナラに関しては、樹液の出る部位が年によってバラバラで、クヌギの様な目途を付けるのはかなり難しくなります。
ただある程度木が大きくなれば、樹液を出すポテンシャルは十分。樹皮をざっと見て全体が荒れた感じになっていれば、その年の夏にそれらのいずれからか樹液を出す可能性は高く、クヌギ同様巡回ポイントとしてチェックしておくと良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか。
冬場だからこそ簡単に分かる、カブトムシの採集に適した森林や樹木のポイントと見分け方を説明してきましたが、口頭や文章で説明するには、不完全で表現しずらい部分が多いのも確かです。
最も良い方法は、樹木のカラー図鑑を参照に自分の目で見比べ確かめながら、その可能性を探ってゆく事。
子供と行えばそれだけで楽しく自由研究の素材となりますし、夏場にはもちろん、立派なカブトムシの採集という最高の形で締めくくれるに違いありません。
ちなみに現在は、テーマに沿った植物図鑑というのも人気。
ハンディサイズのドングリ図鑑やそれを実らせる樹木の図鑑も出ていて、カブトムシの集まる樹木探しに大いに役立つでしょう。