歯をきちんと管理しないとむし歯や歯周病になり、最悪の場合、歯を失ってしまいます。
それだけではありません。歯周病は炎症を引き起こす物質を生じさせるので、血糖値が高い状態が続きやすくなり、糖尿病を悪化させることがわかっています。
また、歯周病が心臓血管疾患や認知症の発症リスクを高めるとの報告もあります。
全身の健康を守るためには、歯の管理が欠かせません。
ライフステージ毎の歯のケア注意点とは
ライフステージによって、さまざまな口の健康リスクが発生します。
その特徴を知っておくことが適切な歯の管理につながります。
乳児~幼稚園児
虫歯になりやすい乳歯は、大人が乳歯を守ってあげることが重要です。
新生児の口の中にはむし歯菌はいません。家族が口の清潔を保つことが、むし歯菌の感染防止に有効です。
乳歯が生えたら、歯ブラシやデンタルフロス(以下フロス)を使って、親が仕上げ磨きをしてあげましょう。上手に口をゆすげるようになったら、歯磨き習慣を身につけさせましょう。
小学生~中学生
永久歯に生え替わり、磨き残しが出やすい時期です。
5、6歳から12、13歳ごろまでに乳歯から永久歯に生え替わります。乳歯が抜けたり、永久歯が生えたりして歯並びが変わるので、磨き残しが多くなり、むし歯の危険が高まります。
フッ素入りの歯磨き剤を使ったり、歯科医院で定期的に高濃度のフッ素を塗ってもらうとよいでしょう。
高校生~20代
口の中のトラブルが増加しやすい時期です。
部活や受験勉強などで忙しくて、歯磨きの時間が十分に取れなくなったり、間食や夜食の増加で、むし歯や歯肉炎(歯周病の初期段階)にかかりやすくなります。
思春期特有のホルモンバランスの変化が、歯肉炎(歯周病の初期段階)を悪化させる原因にもなります。歯への関心が薄くなる時期だからこそ、定期的な歯科健診を習慣にしたいものです。
30代~60代
歯周病のリスクが高まり、歯を失う人も急増する時期です。
成人期に増える肥満や不規則な生活、喫煙、ストレスなどによる免疫力の低下も加わり、特に歯周病の危険が高まります。
実際、40歳を境に歯周病で歯を失う人が急増します。
歯周病は初期には痛みがないので、気づきにくいものです。歯科健診で早期発見・早期治療に努めましょう。
60代後半以降
唾液の分泌量の減少などで、口腔機能が低下する時期です。
噛む力や飲み込む力が低下して、誤嚥の危険もあります。また、手の動きが悪くなるなど歯磨きが不十分になりがちです。
歯を失い、入れ歯を使う人が増えます。加齢に伴い、自浄作用をもつ唾液の分泌量が減少し、口の中が汚れやすくなります。歯科医師などのプロのケアを、積極的に活用しましょう。
妊婦さん
生まれてくる赤ちゃんのためにも、口腔ケアが重要です。
妊娠中はホルモンバランスの変化やつわりによる歯磨きの不足で、歯周炎・歯周病になりやすくなります。歯周病があると、早産や低体重児出産のリスクが高まるといわれます。
体調の良いときに早めに歯科健診を受けましょう。妊娠中も歯科治療は可能です。
はじめよう、歯の健康習慣
毎日歯磨きをしているにもかかわらず、むし歯や歯周病にかかる人は少なくありません。今一度、歯の管理法を見直し、正しい歯の健康習慣を改めて身につけることが重要です。
むし歯や歯周病の原因は、口の中の食べカスや歯垢(プラーク)に棲みついたむし歯菌や歯周病菌です。これらを取り除くために有効なのが歯磨きです。磨き残しのない歯磨きが基本です。きちんと磨けてますか。
磨き方
一気に磨くと磨き残しが生じやすいので、歯は2本ずつなどに小分けして丁寧に磨くとよいでしょう。歯ブラシは小刻みに動かします。特に歯と歯ぐきの境目は意識して磨くことが肝心です。
小学校の低学年くらいまでは、自分で歯磨きができるようになっても、どうしても磨き残しが出ます。子どもを寝かせるか後ろに立って、親が仕上げ磨きをしましょう。
歯垢は、歯と歯の間や歯と歯ぐきの境目に付着した食べカスを栄養として増殖します。食事の何分後といったことにこだわらずに、「食べたら磨く」ことを習慣にしましょう。
時間がなくて毎食後磨くことは無理という場合は、せめて就寝前に念入りな歯磨きを。就寝中は、唾液の分泌が減少するため、口腔内に雑菌を残したまま眠ると、繁殖しやすくなります。
舌の表面はじゅうたんのヒダのようになっていて舌苔がたまりやすく、口臭の原因になります。定期的に舌用ブラシで軽くブラッシングの舌磨きが重要です。力を入れすぎると舌とヒダが痛むので注意しましょう。
歯ブラシ
歯ブラシは、サイズやブラシの硬さなどが異なる複数の歯ブラシで磨くと、磨き残しが少なくなります。奥歯はタフトブラシ、歯と歯の間は歯間ブラシやフロスを使用するとベストです。
歯ブラシを長く使っていると、歯垢を落とす力が落ちてくるばかりか、歯ぐきを傷つける原因になります。歯ブラシ自体が細菌の温床になることもありえます。毛先が開いてきたら交換をおすすめします。交換は月に1回程度が目安です。
どんなに優れた電動歯ブラシでも、歯と歯の間の汚れを十分に除去することは困難です。歯間ブラシやフロスを併用し、電動歯ブラシだけで済ませないことが重要です。また、普通の歯ブラシ同様、ブラシ部分をチェックして定期的に交換が望ましいです。
歯磨き剤
構成成分の違いによって「歯周病予防に」「歯を白くする」「しみるのを防ぐ」など、歯磨き剤の容器やパッケージに効果が記載されています。目的に合わせて選ぶとよいでしょう。
洗口液は保湿や口臭の予防などに有効ですが、歯の汚れは落とせません。歯磨きをせずに洗口液を使うのは、床のホコリをとらないでワックスをかけるようなものです。洗口液はしっかり磨いた後に使用が基本です。
年2回はプロによる徹底的ケア ~歯のかかりつけ医をもとう~
歯医者さんは歯が痛くなってから行くところだと思っていませんか。最近は多くの歯医者さんで歯科健診(口腔ケア)を行っています。自分にあった歯のかかりつけ医をもちましょう。
痛みの症状が出たときには、むし歯や歯周病はかなり進行しています。進行すればするほど治療は大がかりになります。痛みの症状がでていない早期の段階での発見・治療することが大切です。
人によって磨き方のクセがあります。染め出し液を使ったりして、どういうところに磨き残しが多いかを指摘してくれます。また、その人が苦手な場所の歯の磨き方についても指導してもらえるなど、その人に合った歯磨き法をアドバイスしてくれます。
床を隅々まできれいに掃除をしてからワックスがけをするように、歯を徹底的に清掃した後に、むし歯予防や、初期のむし歯の修復を促すために、フッ素塗布で仕上げることもあります。
だらだら食いは、歯に悪い影響を与えます!!
食事をすると口の中は酸性に傾き、歯のミネラル質が溶け出します。その後、唾液により中和され、歯は修復されます。
だらだら食いをすると修復が間に合わず、むし歯のリスクが高まります。
喫煙は、歯の敵です!!
喫煙は血管を収縮させ、歯ぐきが炎症を起こしても出血しにくくなるため、気づかないうちに歯周病が重症化することもあります。
また、タールが歯に付着すると歯垢がつきやすくなります。
まとめ
いかがでしたか。
何気なく行っている歯磨きが、実は全身の健康維持につながっています。
歯の管理は、だれでも取り組める優れた健康管理術の一つだということを忘れないようにしたいものです。