先日、棋譜動画の削除問題でユーチューバーが勝訴した訴訟の判決が大阪地裁でありました。
この判決は今後、将棋や囲碁などの棋譜情報の利用に関する重要な判断となる可能性があります。
そこで今回は、この事件についてご紹介します。
ユーチューバーが将棋チャンネルに勝訴した事件とは?
将棋の対局の棋譜を盤面図に再現して、さらにどちらか有利な状況かを数値で表した評価値というものも表示した動画配信するユーチューバーが、放映権を持つ囲碁将棋チャンネルから著作権侵害を理由に削除申請されたのは不当だとして、大阪地裁に訴えた事件。
ユーチューバー側が勝訴したことが1月16日に判明。
判決では、棋譜はすでに公表された客観的事実であり、自由に利用できる情報だと認めた。
この事件は、2020年9月から23年1月にかけて、将棋の特に人気のある棋士の対局などを取り上げた動画をユーチューブなどで配信した奈良市内の男性が、囲碁将棋チャンネルから削除申請を受けたことを巡って発生。
囲碁将棋チャンネルは、日本将棋連盟などの出資を受けており、有料で対局の様子などを放送している。
男性は、自ら用意した盤面で指し手を再現しながら感想や解説を語る動画を作成していたが、これが著作権侵害に当たるとして削除された。
なぜ、将棋チャンネルは棋譜動画を削除したのか?
囲碁将棋チャンネルは、将棋や囲碁のタイトル戦やプロ棋士の対局などを有料で配信しており、放映権も保有。
同社は、自社が配信する対局の棋譜を使って動画を作成し、広告収入を得ているユーチューバーに対して、著作権侵害だとして削除要請を行った。
同社は、自社の放送番組とユーチューバーの動画は構成や内容が似ており、視聴者が減少する可能性があると主張。
また、囲碁将棋チャンネル側は「ただ乗りで情報を利用されるのは不公平だ」と反論し、「中継視聴者が減れば棋戦を開催できなくなる恐れがある」と訴えた。
ユーチューバー側は、どのような正当性を主張したのか?
ユーチューバー側は、自分たちの動画は著作権侵害ではないと反論。
彼らは、自分たちが利用した棋譜は公表された客観的事実であり、誰でも自由に利用できる情報だと主張。
また、自分たちの動画は盤面図に指し手を表示するだけであり、囲碁将棋チャンネルの放送番組とは全く異なるものだとも述べた。
そして、約340万円の損害賠償などを求めて訴訟を起こした。
裁判所の判断と、ユーチューバーの今後の活動について
大阪地裁の武宮英子裁判長は「動画は著作権侵害でない」と判断。
「利用された棋譜の情報は、対局者の指し手や挙動であり、公表された客観的事実。自由利用の範疇に属する」と指摘。
また、「動画は中継番組と構成も全く異なり、競合するものではない」とも述べた。
この結果、囲碁将棋チャンネル側に約120万円の支払いを命じた。
この判決は、将棋や囲碁などの棋譜情報の利用に関する重要な判断となる可能性がある。
インターネット上では、多くの人が自分の考えや感想を動画やブログなどで発信しており、その際に棋譜情報を利用することも多い。
しかし、これまでその法的な位置づけは明確ではなかった。
今回の判決は、棋譜情報は誰でも自由に利用できる情報だという見解を示したことで、将棋ファンやユーチューバーにとって喜ばしいニュースである。
彼らはこれからも自由に棋譜を利用して動画を作成し、視聴者と交流できるだろう。
一方で、囲碁将棋チャンネルは今後どのような対応を取るのか注目される。
同社は判決に不服であれば控訴することもできるが、その場合はさらなる訴訟費用や時間がかかることになる。
まとめ
いかがでしたか。
ユーチューブで将棋の棋譜動画を配信した男性が、囲碁将棋チャンネルから削除要請を受け、棋譜は自由利用できると訴えた事件。
大阪地裁は、男性の主張を認めた。
この判決は、棋譜情報を利用しているユーチューバーとその視聴者たちにとって重要な判決となりうるでしょう。